しかし、その扉が開いた時……
人間たちが暮らす〈常界〉、妖精たちが暮らす〈天界〉、魔物たちが暮らす〈魔界〉、それらが交わり、世界の秩序は破壊された。
その扉が〈なぜ〉〈誰によって〉〈なんのために〉開かれたのかも誰もしらない。
ただ人々は、その扉を、畏怖と畏敬の念を込めてこう呼んだ。
〈聖なる扉〜ディバインゲート〜〉と……。
交わった3つの世界。
その結果、それぞれの世界はぶつかり合い、平穏だった世界は、争いの絶えない、混沌とした時代へと突入した。
3つの世界の者たちが思い描く〈理想郷〉は、モザイクのように絡みあい、いつまでも決して一色に染まることはなかった。
3つの世界の支配層は、こうした混沌を打破すべく〈世界評議会〉を結成。交わった3つの世界を総称して〈統合世界〉と呼び、秩序を取り戻すべく奔走し始めた。
そしてまた、〈統合世界〉を見下ろすふたつの〈上位なる世界〉、神々が暮らす〈神界〉と竜族が暮らす〈竜界〉が、遥か彼方からその行く末を見守っていた。
一方で、人々の中には、これまで誰も〈見ることも〉〈触れることも〉〈たどり着くことも〉出来なかった〈聖なる扉〜ディバインゲート〜〉の存在を認識する者たちが現れはじめた。人々は、こうした特別な力を持つ者たちを〈適合者〉と名付けた。
だが、これまで聖なる扉を目指し、帰って来た者は、誰ひとりとしていなかった。それでも〈適合者〉達は、扉を目指す。たどり着き、その先に、進みし者の願いを叶えるという、聖なる力を信じて……。
その胸に願いという痛みを抱え……。
矛盾する世界の現実の狭間で揺れ動く、彼らの痛みは、力に変わる。
それは優しき刃ともなりえるが、非常な慈愛ともなる。
変えたいのは、過去か未来か。
守るべきは、最初の約束か、最後の約束か。創造すべきは、万人のための世界か、己ための世界か。
彼らは自らに問い続ける。扉にたどり着くために必要なのは〈意思〉なのか〈欲望〉なのか……。
変えたいのは、過去か未来か。
守るべきは、最初の約束か、最後の約束か。
創造すべきは、万人のための世界か、己ための世界か。
そして、選択の時。
〈聖なる扉〜ディバインゲート〜〉その前で……。
扉をその手で開くのか閉じるのか……。
その先へ進むか否か。
変えるべきは、世界なのか、それとも……。
少年たちは、歩み出す。
その全てを知るために―。